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古今著聞集
十/相撲強力
近比近江国かいづに、金といふ遊女有けり、其所のさたの者也ける法師の妻にて、年比すみけるに、件の法師又あらぬ君に心おうつしてかよひけるお、金もれ聞て、やすか、らず思ひけり、ある夜合宿したりけるに、法師何心なくて、れいのやうに彼事くはだてんとて、またにはさまりたりけるお、其よは腰おつよくはさみてけり、しばしはたはぶれかと思ひて、はづせはづせといひければ、猶はさみつめて、和法師めが人あなづりして、人こそあらめ、おもておならべたるものに心うつして、ねたきめみするに物ならはかさんと雲て、たヾしめにしめまさり、ければ、既にあはおふきて死なんとしけり、