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大鏡
二/左大臣時平
此左大臣、〈○時平〉ものヽおかしさぞえねんぜさせたまはざりける、わらひたヽせ給ひぬれば、すこぶる事もみだれけるが、北野、〈○菅原道真〉によおまつりごたせ給ふあひだ、ひだうなる事おほせられければ、さすがにやむごとなくてせちにし給ふ事おば、いかヾはとおぼして、このおとヾのし給ふことなれば、ふびんなりとなげき給ひけるお、なにがしの史が〈○史が原作する今拠一本改〉ことにも侍らず、おのれがかまへにて、かの御事おとヾめ侍らんと申ければ、いとあるまじき事、いかにしてかはなむとの給はさせけるお、だヾ御覧ぜよとて、ざにつきて、ことさびしくさだめのヽしり給ふに、この史、ふむばさみにふみはさみて、いらなくふるまひて、このおとヾにたてまつるとて、いとたかやかにならして侍りける(○○○○○○○○○○○○○)に、おとヾ、ふみもえとらずして、わなヽきて、やがてわらひて、けふはすちなし、右のおとヾ〈○道真〉にまかせ申とだにいひやり給はざりければ、それにこそすがはらのおとヾの心のまヽにまつりごち給ひけれ、