[p.0452][p.0453]
古事記伝
二十七
枝(えだ)は手足お雲、書紀雄略巻に、張夫婦四支於木、置仮庪上以火焼死〈三代実鎌卅に、美作守四支王と雲人見えたり、異なる名なり、若は誤字にや、印本には、王字お脱せり、古本にあり、〉とある支と同じ、和名抄形体部に、野王按肢四体也、和名衣太(えだ)とあり、手足は樹枝と同じさまなる物なる故に、共に延陀(えだ)と雲なり、〈樹の枝お本にて、其に准へて雲には非ず、此も彼も本よりの名なり、さて此の枝字お、延佳は可作肢乎と雲れども、延陀と雲名同じければ通はして枝とも書るは、古の常なり、漢籍にすら、孟子に、為長者折枝と雲るお、趙氏注、には、折枝按摩手節也と雲ひ、後漢書王襲伝注にも、劉熙雲、孟子雲、折枝若今按摩也と雲り、凡て支、枝、肢は、皆本は同じくて、相通ふ字なり、〉