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源平盛衰記
二十三
忠文祝神附追討使門出事
援に忠文大惡心お起して、面目なく内裏お罷出けるが、天も響き地も崩るヽ計の、大音声お放雲けるは、口惜事也、同勅命お蒙て同朝敵お平ぐ、一人は賞に預り、一人は恩に漏る、小野宮殿の御計、生々世々不可忘、されば家門衰蔽し給て、其末葉たらん人は、ながく九条殿の御子孫の奴婢と成給ふべしとて、高く哼り手おはたと打て、拳お握り(○○○○)たりければ、左右の八の爪、手の甲(○○○)に通り、血流れ出ければ、紅お絞りたるが如し、やがて宿所に帰り飲食お断、思死に失にけり、