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太平記

大塔宮熊野落事
大塔宮二品親王は、〈○護良中略、〉、般若寺お御出在て、熊野の方へぞ落させ給ける、〈○中略〉数日の間、斯る嶮難お経させ給へば、御身も草臥はてヽ、流るヽ汗如水、御足は欠損して、草鞋皆血に染れり、御伴の人々も、皆其身鉄石に非れば、皆飢疲れて、はか〴〵敷も、歩得ざりけれ共、御腰お推、御手お挽て、路の程十三日に、十津河へぞ著せ給ひける、