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太平記

塩飽入道自害事
三郎左衛門忠頼、〈○中略〉袖の下より刀お抜て偸に腹に突立て、畏たる体にて死ける、其弟塩飽四郎是お見て、続て腹お切らんとしけるお、父の入道大に諫て、暫く吾お先立、順次の孝お専にし、其後自害せよと申けるお、塩飽四郎抜たる刀お収て、父の入道が前に畏てぞ候ける、入道是お見て、快げに打笑、閑々と中門に曲彔おかざらせて、其上に結跏夫坐(○○○○)し、硯取寄て、自ら筆お染め、辞世の容おぞ書たりける、〈○下略〉