[p.0482]
今昔物語
十一
天智天皇建志賀寺語第二十九
今昔、天智天皇近江の国志賀郡粟津の宮に御ましける時に、寺お起てむと雲ふ願有て、寺の所お示し給へと祈り願ひ給ひける、〈○中略〉明る年の正月に、始て大なる寺お被・起れて、丈六の弥勒の像お安置し奉る、供養の日に成て、灯盧殿お起て、王自ら右の名無し指お以て(○○○○○○○)御灯明お挑給て、其指お本より切て、石の筥に入て、灯楼の土の下に埋み給ひつ、是手に灯お捧て弥勒に奉給志お顕し給ふ也、