[p.0507]
源平盛衰記
三十
真盛被討附朱買臣錦袴並新豊県翁事
木曾打案じて、哀武蔵の斎藤別当にや有らん、但其は一年少目に見しかば、白髪(○○)の糟尾に生たりしかば、今は殊外に白髪に成ぬらんに、鬢鬚の黒きは何やらん、面の老様はさもやと覚ゆ、実に不審也、樋口ば古同僚、見知たるらんとて召れたり、髻お取引仰けて一目打見て、はら〳〵と泣、穴無慚や真盛にて候けりと申、〈○中略〉大国の許由は、耳お穎川の水に濯て、名お後代に留め、我朝の真盛は、髪お戦場の墨に染て、悲みお万人に催しせり、