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古事記伝

御美豆良(みみづら)は、上代に男の御装にて、髪お左右へ分て、結綰(ゆひわかね)たるものなり、下に天照大御神の、解御髪纏御美豆羅たまふとあるも、書紀に息長足姫尊の橿日浦にして、御髪お解して海に入洗たまひて、占たまふに、御髪自分たるお、即その分れたるまヽに結て、髻としたまふことあるも、仮に男貌と為たまふなり、又崇峻紀に、古俗年少児、年十五六間束髪於額(ひさごばなにす)、十七八間分為角子、今亦然之とある、此角子即美豆良なり、〈十七八間とあるは、やゝ後のことなるべし、いと上代は、すべて男は然せしこと右に雲が如し、角子おあげまきと訓るは、後の称なり、即みづらと訓べし、〉万葉〈七の二十八丁〉に角髪(みづら)とあり、左右にあるが角の如くなる故に、かヽる称は有なり、後世に鬢頬(びむづら)と雲は、此美豆良お訛れる言なり、〈江次第に、幼主之時垂〓頬、〉