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秉燭譚

高鬟堕髻のこと
或人の席上にて、曲舞にかうくわそもとひお切、半檀に枕すと雲ことあり、何人の詩句お取たるやと雲り、晋山氏雲、李賀が詩に出づと、その後、全唐詩お考るに、李長吉美人梳頭歌に雲、西施暁夢綃帳寒、香鬟堕髻半枕檀と雲々、漁隠叢話にも、全首お載せり、沈檀とは、沈香檀香のことなり鬟髻の香しきことおいへり、それおあやまりて、もとひおきつて半たんに枕すといへり、堕髻と雲は、崔豹が古今注にあり、倭堕、髻一雲堕馬之余形也と、本国のさげかみは、後漢の堕馬髻の遺風と雲ことにや、