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今昔物語
二十八
尾張守五節所語第四
今昔天皇の御代に、のと雲ふ者有けり、〈○中略〉尾張の守二被成たり、〈○中略〉三年と雲ふ年、五節に被宛にけり、〈○中略〉此の五節所咲はむとて、殿上人達の謀る様は、〈○中略〉五節所の前に立並で歌お歌はむと為る也、其作たる様は、鬢たヾらは、ゆかせはこそ、おかせばこそ、愛敬付たれと、鬢たヾらと雲は、守の主の毛清く鬢の落たるお、此る鬢たヾらして、五節所に、若き女房の中に交り居給たるお、歌はむずる也、