[p.0516]
太平記
十三
北山殿謀叛事
大納言殿、〈○西園寺公宗〉縄取に引へられて、中門へ出給ふ、其有様お見給ける北の御方の心の中、譬へて雲はん方もなし、既に庭上に舁居たる輿の簾お褰て、乗らんとし給ける時、定平朝臣、長年に向て、早と被雲けるお、殺し奉れとの詞ぞと心得て、長年、大納言殿に走懸て、鬢髪お〓て(○○○○○)、覆に引伏せ、腰刀お抜て、御首お掻落しけり、