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太平記
二十一
塩冶判官讒死事
侍従立留て、〈○中略〉一日物詣の帰さに参て奉見しが、〈○塩谷高貞妻、中略、〉南向の御簾お高くかヽげさせて、琵琶おかきならし給へば、はら〳〵とこぼれかヽりたる鬢(○)のはづれより、ほのかに見へたる眉の匂、芙蓉の眸、丹花唇る、何なる笙の岩屋の聖なりとも、心迷はであらじと、目もあやに覚てこそ候しか、〈○下略〉