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安斎随筆
後編三
一古髪結の事 古は髪お結ふに、びん付油無之、びなんせきにて、毛お付たる也、びなんせきは、びなんかづら也、其茎の皮お削り捨、その茎お水にひたしねばる、北条五代記に、髪おば、びなんせきにて、びんお高くつけあげ給へりと有、又能の狂言に、あそふと雲狂言あり、麻生殿と雲大名、鬢お付るに、其の家人一尺計ふとき長きすりこ木お持出て、びなんせきにて候とて、鬢おなで付くる体おする也、能の狂言は古き事也、