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歴世女装考

椎茸たぼの権輿
序文に、明和乙酉の歳〈二年なり〉とありて、作者の名は三橋老人とあり、写本全五巻、書名お寝覚草といふ随筆三の巻に、ある老女の物語に、御奉公せし比、京都より下れし女中方の髪お葵たぼとて、名もおもしろく見つきもよきゆえ、朋輩しゆうつしゆひけるが、今はいづかたにてもゆはるヽやうになりしは、名もめでたきゆえなるべしと語りき、此老女貞享二年の生れなり、是お今の俚言に、椎茸たぼとは、髪の黒きお乾たる椎茸に準へつらんが、見立もあしく、名もいやしげなり、あふひだぼにてこそよけれとあり、又前にも引たる女用訓蒙図彙に、御所風と傍註したる図、右の説に符合す、