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屠竜工随筆
今歌舞妓狂言にする、丹前立髪六方は、其比丹後殿前の風呂屋へ通ふ若侍どもの、病気分にして引籠居たるが、長髪にてかしこへ通ひたるが、ふと伊達に見えければ、月代剃て能人も、皆長髪にてかよひしより発りしとなり、夫等が大小の貫木ざしにさして、大道おせましと振かけて歩みけるより、立髪丹前などいひしなり、六方は彼長き大小と、両の腕と六方へふりわく、るといふ心なるべし、