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太平記

大塔宮熊野落事
宮〈○大塔宮護良、中略、〉木寺相模に、きと御目合有ければ、相模此兵衛が側に居寄て今は何おか隠し可申、あの先達の御房こそ、大塔宮にて御坐あれと雲ければ、此兵衛尚も不審気にて、彼此の顔おつくづくと守りけるに、片岡八郎、矢田彦七、あら熱やとて、頭巾お脱て側に指置く、実の山伏ならねば、さかやき(○○○○)の跡隠なし、兵衛是お見てげにも山伏にて御座ざりけり、賢ぞ此事申出たりける、あな浅猿、此程の振舞、さこそ尾籠に思召候つらんと、以外に驚て、首お地に著手お束ね、畳より下て蹲踞せり、