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牢獄秘録
牢内のもの髪月代之事
一毎年七月一度宛、牢内之者不残髪月代いたさせ候事也、此節は揚屋もの、女牢〈是は比丘尼有之なり〉髪月 代致す事なりとぞ、此時には、牢屋〈江〉届出、帯刀上座に出づ、〈腰かけ腰掛居る〉見廻り〈町同心同断〉壱人、牢屋同 心鎰役平当番共廿五六人、張番拾人計り罷出で、右牢庭〈江〉むしろお敷、牢内之科人一と立三十 人位づヽ手錠かけ呼出し、〈手錠不足ゆへに、縄手錠し、〉大盥に水お入、月代〈張番壱人〳〵に頭おもみ遣すなり〉おぬらし、髪結 〈壱け年一度づゝ江戸中の髪結壱町より壱人づゝ家主さし添出るなり、〉其うしろへ廻り、髪月代とも剃結ふ事也、猶髪ゆひの後に 差添之家主ひかへ居る事也、此時病人ばかり牢内に残るよし、此日は江戸中の髪ゆひ、早朝よ り牢屋敷の門前に詰居る、猶髪結壱人に、家主壱人づヽ差添出る事也、
一平日髪計りは牢内にて互に結ひあふ事也、又牢内名主壱番役と、弐人位は、一と月に一度づヽ 月代剃る事有之、是者如何成事にや、訳不知、