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拾玉藻

婦女の結髪
春塘故実に、人皇四十代天武天皇の十一年に、国中にあふせて、婦女の髪お結ふべしとの命あそける、さらばこれまでは皆下げ髪にして居たりしと見ゆ、故に此朝より後は、はれの儀式には、一切の女の髪お結ひて、平日には下げ髪にして居たるなり、それが中頃よりは、平生にも髪結ふて居るやうになりたる故に、又郤つてはれの時には、昔の下げ髪にせよと命ぜられたることなり、今は上つかたにては、はれの時は下げ髪、平生には結ふことになさる、さらば下様にても、はれの時は下げ髪にすべきことなり、