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牛馬問

神祖遠州高天神の城お責給ふ時、討死の者ども、首実撿遊しける中に、年の比十六七ばかりなる首の、うす仮粧にかね黒く、長(たけ)なる髪お結たれば、更に男女の差別しれざりしに、神祖仰せけるには、眼お明て見よ、瞳おかへして眶(まぶた)の中へ入て、白眼ばかりぞ見へたるに於ては女なり、瞳あきらかに見なば、男なるべしと、御教に任て、眼お開き見るに、瞳の明に見へければ、男にぞ定まりぬ、其後相しれたるに、栗田刑部が寵愛の小姓に、時田鶴千代といひし、筋目も宜しきものにて有りけるとなり、誠に可恐、