[p.0562][p.0563]
歴世女装考

深剪(ふかそぎ) 髪剪(かみそぎ)
中昔の書どもに、深曾岐、髪曾岐といふ事あまたみえたり、そのよしお書面に校ぶれば、二歳までは髪お剃り、三歳の春より髪お生じ、其子の誕生日に髪置の祝ひおなす、此時裳著もあり、さてかきたらしおく髪やヽ生ひのびて、帯のあたりにとヾくほどにいたれば、其見の歳のほどにはかかはらず、髪の末お剪整るお加美曾岐(○○○○)とて祝ふ、〈切といふことばお忌てそぐといふ〉一年に二度ばかりそぐなり、斯為は髪の末ひとしくて、見つきよからん為、あるひは毛脚おそろへて生延さんためなり、後水尾院宸作年中行事、〈写本、慶長の頃の物、〉三歳の時髪置あり、霜月師走の内雲々、九歳の時紐おとしあり、身の長により、或はいそがれて春などもあり、是はかしこきあたりの御事なれど、上お学ぶ下の風も推てしるべし、