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源平盛衰記

清盛捕化鳥並一族官位昇進附禿童並王莽事
入道の世の聞は、聊も忽緒に申者なかりけり、其故は入道の計ひにて、十四五若は十六七計なる童部の髪お頸の廻に切つヽ、三百人被召仕けり、童にもあらず、法師にもあらず、こは何者の貌やらん、〈○中略〉禿に惡しと思はれたる者は、入道殿に讒せられて、咎なくして多く損ずる者も有けり、おぢ〳〵も、内々は、此禿の体こそ心得ね、縦京中の耳聞の為成とも、隻普通の童にてあれかし、必しも汰へらるヽ事よ、又一人も闕れば、入立てヽ三百人おきはめらるヽも不審也、