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北辺随筆

ひさご花
崇峻紀雲、是時厩戸皇子束髪於額(ひさごばなにして)雲々、注雲、古俗、年少児十五六間束髪於額、十七八間分為角子(あげま)、今亦然之、このひさご花あげまきのふたつがうち、あげまきは、其名のちにも多くみゆれど、ひさご花の事、たしかなる例おみず、あげまきは、催馬楽に、総角(あげまき)、安介万支也止宇々々(あげまきやとうとう)、比呂波下利也止宇止宇(ひろばかりやとうとう)、左加利天禰太礼止毛(さかりてねたれども)雲々、神楽歌に、総角(あげまき)、総角乎和左田爾也里天也(あげまきおわさだにやりてや)雲々などみゆるは、いはゆる角子にて、みづらゆひたる童形の事なるべし、雅亮装束抄に、わらは殿上のくだりに次て、みづらのゆひやうあり、まづとき櫛にて、ちごのかみおときまはして、ひらかうがいにて、わけめのすぢより、うなじおわけくだして、まづ右のかみお、かみねにしてゆひて、左のかみおよくけづりて、あぶらわたつけなでなどして、もとヾりおとるやうにけづりよせて雲々、この詞、かの分為角子とあるによくかなへるおおもふべし、