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貞丈雑記
二/人物
一古武家の子息、元服以前の童子の体は、今の世の如く前髪おわけず、又もとどりお折りわけず、髪の根お平元結にてゆひて、肩のあたりまで届く程に切り、さげ髪にする也、此体お喝食と雲也、衣服はすあふお著して、えぼしおばかぶらざる也、元服の時、髪の先お短く切て、始てえぼしおかぶる也、又髪お長くして、もとどりお平もとゆひにてゆひて、女のごとく下髪にしたるも有、此体お児(ちご)と雲、衣服は長絹すいかんなどお著す、是も元服せぬ内は、えぼしかぶらざる也、大名重き家にては、ちごの体お用、常の人は喝食の体にてありし様に、旧記に見えたり、