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我衣
髪結の始は、寛永の比か、里見家の浪人、在々へ陣幕お持あるき、傍の木或は竹などへ結付、百姓の髪お結て渡世す、是は何国にても構はず、隻人通りある所お見かけてすることなり、髪結床の長暖簾是に本づく、其後江戸の始、赤羽根の床最初なり、是も幕おはりて結ひたり、其比是お一文ぞりと雲、今も上総房州より結髪多く出るは、里見家の浪人なればなり、老年に及ぶと、国へ引籠田地お求め、其子又如斯、是は上総房州今にかはらずといへり、