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塩尻
四十
五味蔓お以て、〈○註略〉今男女盛に髪おかたむ、是も中世よりせし事と見へたり、比日は三州某の谷、びなんかづら取尽しけると、京師難波東都はさら也、所々の都会及び田舎のすへ〴〵に、婦人是お用ひざるはなしとかや、是も又一時の笑草といふべきにや、
賢按享保の頃、予が見し時のびなんかづらは、髪お固るものにてはなし、男女とも髪お結上げ て、艶お出すに、上へ引事なりし、元文の頃より一変して、透油のこどくゆるきびん出しといふ 油はやりて、段々びなんかづらすたりて、今はびなんかづら売ものもなし、びなんかづらお出 すかづらつぼといふ焼物の、灰吹のごとくなるものありしが、いつとなく此品も今はすたり たり、今もびなんかづらお看板に出し置は、両替町の下村が見世計なりしが、今は有やなしや、