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幽遠随筆

今世に、こと男したる女おとらへて髪切(○○○○○○○○)事あり、さる事もいにしへより有けることにこそ、新続古今に、
あひしれりける女の、おとこに髪切られぬときヽて、つかはしける、大蔵卿胤材
ちはやぶるかみもなしとかいふなるおゆふ計だに残らずや君、とあり、えぞが島といふ所には、女のふた心有ものは、とらへて髪お焼つくすとかや、近頃商人般に乗て、とほつあふみの海おわたりける人の、はやちに吹れて、蝦夷島に流れ行けるが、彼島にひとヽせ計居て、さる事ども見けるが、帰りて後物がたりしけり、