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牛山活套

鬚髪
鬚髪の病と雲は別に苦ことなし、隻鬚髪の白お世俗嫌故に、諸の医書に皆白お変じ黒とちすの方お載す、然れども老て鬚髪の自くなるは常也、何ほど烏髪の薬、及酒薬お服しても、多は黒に変ずること少なり、諸書に白髪お染の蘂方お載せ、或は薬四に販ぐ、其応験如神、されども染て黒めたるも旬日ほど経れば、其髪根のびたる所白き者也、老て鬚髪の白くなるは、血の潤沢枯涸するの事にして、冬に成て草木の枯稿するにひとしけんば、何ほどの水おそヽぎ培養しても、冬枯るる所の草木に益なきに等しかるべし、総て人父母より廩受する所の形体、自然と厚薄ある者にして、其衰る所も薄き所より始る者也、是故に或は目より先に衰る者あり、歯より先に衰る者あり、耳より先衰へ、髪より先衰ふ者あり、是お以てみれば鬚髪の自こと、病となして治するに及まじきこと也、壮年の人髪中に白髪少々生ずる者あり、和俗若白髪(わかしらが)と雲、是不治して可也、四十許より鬚髪白き者は、血虚腎虚に属すれば、八味丸等お用べし、諸の方書に烏鬚髪の薬方載す、可参考、