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古事記伝
十五
凡て御霊(みたま)と雲に、又用と体との差別あり、此大御神の御於(みうへ)にて申さば、高天原お知看て、世お照しなどし賜ふは、広く御霊の用なり、此御鏡は其体なり、さて其御霊お、専此御鏡に取託て、其御醴としたまへば、其用も悉く此御鏡に具り坐り、然らば其用悉く此御鏡に移り坐て、高天原に坐現御身(うつしみヽ)には、御霊は貽らじかと雲に、凡て神御霊は御霊にて、いとも霊異(ぐしび)なる物にし坐ば、悉く此処にあれども、彼処にもいさゝか減ことなく、彼処に減ねども、此処にも悉く具りて、其体は千万処に分つといへども、ほど〳〵に何れにも、その用は欠ることなし、