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伊勢平蔵家訓
先祖の事
人にはたましひ二つあり、魂魄の二つなり、死する時は、魂のたましひは消て散りうせるなり、魄のたましひは、其家にとゞまりて、いつまでもあるなり、其証拠は、世上に幽霊とて、死たる人の形のあらはれ出る事あり、又死霊怨霊などして、恨ある人にとり付なやまする事あるは、かの魄のたましひ、此世にとゞまりて、其たましひのなすわざなり、心がゝりも恨もなき人の魄は、人の目にも見えず、人おなやます事こそなけれ、其家にとゞまりてある事は、うたがひなし、