[p.0633]
徒然草

又雲、されば人死おにくまば、生お愛すべし、存命のよろこび日々にたのしまざらんや、おろかなる人、此楽おわすれて、いたづかはしく、外のたのしびおもとめ、此財おわすれて、あやうく他の財おむさぼるには、志みつことなし、いける間生おたのしまずして、死に臨て死お恐は、此ことはりあるべからず、人皆生おたのしまざるは、死おおそれざるゆへなり、死おおそれざるにはあらず、死の近きことおわするゝなり、もし又生死の相にあづからずといはゞ、実のことはりおえたりといふべしといふに、人いよ〳〵嘲る、