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窻の須佐美追加

死者三日にして殯する事、誠に古来の道なり、或家の婢女疫疾にて死ければ、例の桶に入て寺に送しに、大雨にて墓の坑鑿がたく、桶ながら眠蔵におきける、その翌日白き帷子著たる者、よろぼひ出て仏壇へ来し故、若き同宿などあはて騒て逃まどひける、住持出て是おたゞし聞けば、彼婢女蘇りて、桶おやう〳〵におしひらきて出たる也、食事などして頓て本復しぬ、髪は既に剃ぬれば、比丘尼になりて遁世しけるとぞ、此たぐひやゝある事にて、折節聞ける事なり、