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閑際筆記

余〈○藤井臓〉諸お壬生の僧順正に聞、有馬山清凉院石文死て、十九日にして蘇、而後人冥途の事お問、石文が曰、隻湖山の間に在て、風景の好に対する耳、他見所なし、因て思之、我昔叡山に登、湖水お見、大に心目お悦す、然しより後敢忘ず、時々復往、これお観と欲す、冥途に見所恐は是なる歟、こヽに知平生心中に一物なかるべし、石文が此語最よし、禅者に非ば、必地獄天堂説、