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玉勝間

しぬるお病死(○○)といふ事
今の世、おほやけざたの文書などには、人の死ぬるお病死といふこと也、そも〳〵人は、病ならで死ぬるは、百千の中に、まれに一人二人などこそ有べけれ、おしなべては、みな病てしぬることなれば、それおとり分てはいはでも有ぬべくおぼゆるお、これむかしみだれ世のころは、戦ひて死ぬるものゝ多かりし故に、病死は病死と、分ていへりし時のならひのまゝなるべし、