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今昔物語
三十一
蔵人式部丞貞高於殿上俄死語第廿九
今昔、円融院の天皇の御時に、内裏焼にければ、院になむ御ける、而る間殿上の夕さりの大盤に、殿上人蔵人数著て物食ける間に、式部丞の蔵人藤原の貞高と雲ける人も著たりけるに、其の貞高が俄に低して大盤に顔お宛て、喉おくつめかす様に鳴して有ければ、極て見苦かりけるお、〈○中略〉主殿司寄て捜て、早う死給ひにたり、