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太平記

千剣破城軍事
早りおの兵其五六千人、橋の上お渡り、我先にと前たり、あはや此城〈○千剣破〉隻今打落されぬと見へたる処に、楠兼て用意やしたりけん、投松明のさきに火お付て、橋の上に薪お積るが如くに投集て、水弾お以て油お滝の流るヽ様に懸たる間、火橋桁に燃付て、渓風炎お吹布たり、〈○中略〉橋桁中より燃折て、谷庭へどうど落ければ、数千の兵同時に、猛火の中へ落重て、一人も不残焼死にけり、