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方丈記
明る年〈○寿永元年〉は、たちなおるべきかと思ふ程に、あまさへえやみ打そひて、まさる様に跡かたなし、世の人みな飢死ければ、日おへつゝ、きはまり行さま、少水の魚のたとへに協へり、はてには笠うちき足ひきつゝみ、身よろしき姿したる者ども、ありくかと見れば、則たふれふしぬ、ついひぢのつら、路の頭に、飢死ぬる類ひはかずもしらず、