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明良洪範続篇

石田三成生捕と成て京都に於て誅せられし時、其途中にて湯お乞しに、折節其辺に無りしかば、警固せしもの、湯は隻今求め難し、咽乾かば援にあま干の柿お持合せたれば、此お喰れよと雲、三成聞て、夫は痰の毒なり、食すまじと雲に、聞く人大に笑ひて、隻今首おはねらるる人の、毒忌するこそおかしけれと雲しお、三成聞て、女等如き者の心には猶也、大義お思ふ者は、仮令首お刎らるヽ期迄も、命お大切にして、何卒本意お達せんと思ふ故成し由申しき、