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山鹿語類
二十一
剛操(○○)
師〈○山鹿素行〉嘗曰、大丈夫の世に在る、剛操の志あらざれば、心お存すること不能也、剛はよく剛毅にして、物に不屈お謂也、操は我義とする志お守て、聊不変の心なり、大丈夫此心お存せざれば、我好惡する処において、必屈しやすく、義お守る処たしかならざるなり、故に剛操お以て信お立、義お堅くするの行とする也、清廉正直も、剛操お以てせざれば不立、況や士たるの道、常に剛毅お以て質とし、其守る所お以て行とす、人誰か生死利害好惡あらざらんや、内に剛操お以て究理するがゆへに、死の至て可惡、猶安じて就死、害の至て可避、猶安んじて害おうく、財宝酒色の必可好、猶安んじて是おさくるに至るは、剛毅節操の高く守るに不有ば、誰か此行おなさんや、