万葉集

四/相聞

安貴王歌一首〈並〉短歌
遠嬬(とほづまの)、此間不在者(こヽにあらねば)、玉桙之(たまぼこの)、道乎多遠見(みちおたとほみ)、思空(おもふそら)、安莫国(やすけくなくに)、嘆虚(なげくそら)、不安物乎(やすくらぬものお)、水空往(みそらゆく)、雲爾毛欲成(くもにもがもな)、高飛(たかくとぶ)、鳥爾毛欲成(とりにもがもな)、明日去而(あすゆきて)、於妹言問(いもにことどひ)、為吾(わがために)、妹毛事無(いもヽことなく)、為妹(いもがため)、吾毛事無久(われもことなく)、今裳見如(いまもみるごと)、副而毛欲得(たくひてもがも)、
反歌
敷細乃(しきた〻の)、手枕不纏(たまくらまかず)、間置而(へだておきて)、年曾経来(としぞへにける)、不相念者(あはぬおもへば)、
右安貴王娶因幡八上采女、係念極甚、愛情猶盛、於時勅断不敬之罪退去本郷焉、于是王意悼怛、聊作此歌也、