[p.0728]
今物語
或者所の前お春の頃、修行者のふしぎなるがとおりけるが、ひがさに梅のはなお一枝さしたりけるお、児ども法師など、あまた有けるが、世におかしげにおもひて、いるちこの梅の花笠きたる御房よといひて、笑ひたりければ、此修行者立かへりて、袖おかきあはせて、えみ〳〵とわ(○○○○○)らひ(○○)て、
身のうさのかくれざりけるものゆへに梅の花がさきたる御房よと仰られ候やらんと、いひたりければ、この者ども、こはいかにと、おもはずに思ひて、いひやりたるかたもなくてぞ有ける、さうなく人お笑ふ事あるべくもなきことにや、