[p.0730]
古今著聞集
十六/興言利口
北院御室、或かた夕ぐれに、御前に人も候はで、たゞ一所御念誦して、御座有けるに、いづこよりか来りつらん、大床の辺より、世におそろしげなる白髪のうば参りたりけり、またすおやおら引あげて、えみ〳〵として、いかにおそろしく思召候らんなど申て、きら〳〵とわらひ(○○○○○○○○)て候けり、御室の御心の内おしはかるべし、され共少もさはがせ給はで、何ものぞととはせ給ければ、御返事おば申さで、たゞきら〳〵とのみ笑けり、〈○下略〉