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枕草子

まさひろはいみじく人にわらはるゝ物哉、おやなどいかにきくらん、〈○中略〉ぢもくの中の夜さしあぶらするに、とうだいのうちしきおふみてたてるに、あたらしきゆたんなれば、つようとらへられにけり、さしあゆみてかへれば、やがてとうだいはたふれぬ、したふづはうちしきにつきてゆくに、まことに道こそしんどうしたりしか、頭つき給はぬほどは、殿上の大ばんに人もつかず、それにまさひろは、まめひともりおとりて、こさうじのうしろにて、やおらくひければ、ひきあらはして、わらはるゝ事ぞかぎりなきや、