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続古事談
一/王道后宮
後三条院〈○中略〉諸国の重任の功と雲事、長く停止せられける時、興福寺の南円堂おつくれりけるに、国の重任お関白大二条殿〈○藤原教通〉まげて申させ給けるに、事かたくして、たびたびになりければ、主上逆鱗におよびて、仰られて雲く、関白摂政のおもくおそろしき事は、帝の外祖などなるこそあれ、我はなにとおもはむぞとて、御ひげおいからかして、事の外に御むつかりありければ、殿座おたちていでさせ給とて、大声おはなちての給はく、藤氏の上達部、みなまかりたて、春日大明神の御威は、けふうせはてたるぞと、いひかけて出給ければ、〈○下略〉