万葉集

三/挽歌

十六年〈○天平〉甲申春二月、安積皇子薨之時、内舎人大伴宿禰家持作歌六首
掛巻母(かけまくも)、綾爾恐之(あやにかしこし)、言巻毛(いはまくも)、斎忌志伎可物(ゆゆしきかも)、吾王(わがおほきみ)、御子乃命(みみこのみこと)、万代爾(よろづよに)、食賜麻思(めしたまはまし)、大日本(おほやまと)、久邇乃京者(くにのみやこは)、打靡(うちなびく)、春去奴礼婆(はるさりぬれば)、山辺爾波(やまべには)、花咲乎為里(はなさきおヽり)、河湍爾波(かはせには)、年魚小狭走(あゆこさばしり)、弥日異(いやひけに)、栄時爾(さかゆるときに)、逆言之(およづれの)、枉言登加聞(まがごととかも)、白細爾(しろたへに)、舎人装束而(とねりよそひて)、和豆香山(わづかやま)、御輿立之而(みこしたヽして)、久堅乃(ひさかたの)、天所知奴礼(あめしらしぬれ)、展転(こいまろび)、泥土打雖泣(ひづちなけども)、将為須便毛奈思(せむすべもなし)、
反歌
吾王(わがおほぎみ)、天所知牟登(あめしらさむと)、不思者(おもはねば)、於保爾曾見谿流(おほにぞみける)、和豆香蘇麻山(わづかそまやま)、
足檜木乃(あしびきの)、山左倍光(やまさへひくり)、咲花乃(さくはなの)、散去如寸(ちりにしごとき)、吾王香聞(わがおほきみかも)、
右三首、二月三日作歌、〈○下三首略〉