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古事談
一/王道后宮
陽成院御邪気大事御坐之時、依不御坐儲君、昭宣公〈○藤原基経〉親王達のもとへ行廻つヽ見事体給に、他の親王達はさわぎあひて、或装束し、或は円座とりて奔走しあはれたりけるに、小松帝御許にまいらせ給たりければ、やぶれたる御簾の内に、縁破たる畳に御坐して、本鳥二俣に取て、無傾動気御坐しければ、此親王こそ帝位には即給はめとて、御輿お寄たりければ、鳳輦にこそのらめとて葱花には不乗給はざりけり、