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古今著聞集
四/文学
橘正通が身のしづめる事お恨て、異国へ思ひたちける境節、具平親王家の作文序者たりけるに、是お限りとやおもひけん、
齢亜顔駟過三代而猶沈、恨同泊鸞歌五噫而欲去とぞかけりける、源為憲其座に作けるが、此句おあやしみて、正通おもふこゝろ有てつかうまつれるにやと申ければ、さすが心ぼそくや思ひけん涙おながしけり、さて罷出るまゝに、高麗へぞ行にける、世おおもひきらむには、かくこそ心きよからめと、いみじくあはれなり、