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めのとのさうし
ものお御すき候と申、事により候、びは、琴、ご、すぐろく、かい、花もみぢなどに、すきたるはよし、またわらはにすきて、愛し給ひし人もあり、されども完平のみかどの、こうきうは、つねに歌合に御すき候て、今にのこり候、かやうのやさしき御事、さる御事にて候、誰もやさしきすぢに、いはれさせ給へるぞ、その御歌ぐち、いかゞぞなど申伝へ候なり、そうじて物お御すき候はば、いちご御すき候へ、みやうもくに、へたの物ずきといふ事あり、されどもふかくこゝろにいれられ候はゞ、めでたかるべし、なにとやらん、ひとさかり〳〵御すき候て、末もとおらぬは見にくし、一かうぐちむちには、おとり候とこそおもひ候へ、昔人もさこそは申おきさぶらひし也、