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倭訓栞
前編八/久
くせ 癖疾おいへり、毛病も同じ、字書に癖は嗜好之病といへり、晋書に王済有馬癖、和喬有銭癖、杜預有左伝癖、又王福時誉児癖、黄旅直香癖、李渉竹癖と見えたり、或はくせ事、くせものなどに、曲およめり、諺に人に一癖といへり、慈鎮和尚の歌に、 人ごとに一つのくせは有ものお我にはゆるせ敷島のみち、歌よみのくせも、西行法師は縁行道してうそぶきてよみし、和泉式部は引かづきてよみ、はれの時はかほおふところにさし入てよみける、道綱の母は灯お背きて目おとぢて案じけるとぞ、