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続近世奇人伝

藤堂楽庵 楢林由仙〈○中略〉
由仙楢林氏は外療の名家なれども、性質朴寡欲にして、其伎お売んとせざれば甚貧しく、居るに奴婢なく、出るに僕従なく、簾服お著し、薬籠おみづから携ふ、中年妻お喪て一男一女おはぐゝみ、矮屋に住り、潔癖にて唯物おむさ〳〵しくおぼえけらし、常に門戸お閉て来る人ごとに名乗せざれば開かず、あさくらや木の丸どのゝ心地す、人に物おあたふるは、門人のためといへども、かならず眼よりうへにさし上、是も潔きがだめとそ、